2024年02月24日
先月からドイツに引っ越したので、近場で面白いところないかなと先日「地球の歩き方」をパラパラめくっていたところ、ビビッと来た街があった。
その日、人類は思い出した。ヤツらに支配されていた恐怖を…鳥籠の中に飼われていた屈辱を………
ここ完全に進撃の巨人の世界じゃないか!!!!ウォールマリアが実在したとは!!!進撃の巨人のアニメをちょうど年末年始に一気見し終えたところでニワカ進撃ファンとなっていた私は、即座にネルトリンゲン(Nördlingen)行きのチケットを買った。
シュトゥットガルトから2時間ほどで着いたネルトリンゲン駅周辺はとてもモダンで、一瞬降りる駅を間違えたのかと思ったほどだったが、Linked Horizonの曲を聴いてテンションを上げていきながら歩いていると、すぐに市壁とその中心部にある教会の塔が見えてきた。
ネルトリンゲンはドイツでも珍しく市壁がそのまま残っていて、それに沿って点在する門を通してしか入れない。土曜日に行ったのだけれどそこまで観光客が多いわけでもなく、意外と観光都市というよりは普通の街として機能しているようで、屋根こそ赤く統一されているものの(多分景観条例などがあるのだろう)よく見ると新しそうな建物もたくさんあった。市壁の上部は通路になっていて、壁の中を通って街を一周することができる。一部の壁は住居の建物と合体していたり、おそらく何世紀にもわたって建築・改修が繰り返されたためか色々な構造の壁を見ることができる。
壁はウォールマリアには全然及ばないが場所によってはそこそこの高さがあるので見晴らしが良く、赤い屋根の間を自由自在に飛び回る調査兵団を想像しながら歩いていると楽しい。(こうやって見ていると、立体機動装置ってワクワクするけど市街地で使ったら壁と屋根にフックの穴あけまくってめっちゃ文句を言われそう、とか余計な心配をしてしまう)
中心部には教会があり、90メートルの塔に登ることができる。辟易したことに、進撃の巨人ファンのものと思われる落書きがあちこちにあった。アニメファンの印象を悪くするからやめてほしい。日本語の落書きはなかったのがせめてもの救いだが…… 途中までは石段だが残りは木の階段で、たまに踏むとちょっとだけしなる板があったりして少し怖かった。
塔を登ると「壁の外の世界」が見えて、市壁の境界がよく分かる。それでもやはり、地球の歩き方に載っていたような分かりやすい構図を見たいならヘリか飛行機が必要かもしれない……。
お昼は教会の目の前にある、レストラン兼ホテルのAltreuterで。たっぷりのザワークラウトが美味しかった!
そして、なんとネルトリンゲンは進撃の巨人ファンだけでなく宇宙ファンにとっての聖地でもある。なんとこの街は、1500万年前に巨大な隕石が落下してできた直径23キロのクレーターの中心にあるのだ。さっきの塔の上からの景色でも、遠くにクレーターの周囲の盛り上がっている部分が見えた。
隕石が衝突した時の超高音・高圧な状況下で生成されるスエバイトという岩石が、市内の多くの建物で使われている。
クレーターの端を壁に見立てると、この都市は天然と人工の二重の壁に守られていると見ることもできる。古代の隕石によって形成されたクレーターの内部に、隕石衝突で生成された特殊な岩石を使い人類が都市を築いたとは、なんともロマンのある話ではないか。
このクレーターについてはRiesKraterMuseumで詳しく知ることができる。案内板は全てドイツ語だが、受付で英訳が読めるタブレットを渡してくれた。
ここで取れる鉱物が月のそれに似ているということで、1970年代にはアポロ計画の宇宙飛行士もここに来て訓練をしている。ただ月に行くだけではなく地質学者として科学的な成果を挙げることも重視されるようになったアポロ計画の後半のミッションで、宇宙飛行士が岩石を見分けられるよう特訓するための場となったようである。クレーター博物館には月の石が特別展示されているが、相当大きい(上野の国立科学博物館にもアポロ計画の石が「日米友好の証」として寄贈され展示されているが、1センチ四方もない)。NASAからの多大なる感謝の印ということだろう。
帰り際、Googleマップで市壁の外部に「魔女の石」という名の気になるスポットがあったので寄ってみた。高さ4メートルほどの巨大な岩で、中世には魔女裁判の処刑場となっていたらしく、怪しげな雰囲気が漂っていた。
というわけで、ネルトリンゲンはとても小さな街で地球の歩き方にも1ページしか紹介されていないが、古代隕石から進撃の巨人(そして最後にはちょっとしたオカルト?)まで、オタク心をあちこち刺激してくるとても面白い街だった。なにか一つでも心に引っかかるポイントがあったらぜひ訪れてみてほしい(だれかここで調査兵団のコスプレ撮影してくれないかな…)
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